ムラーノガラスとは~ソーダガラスとクリスタルガラス~

ムラーノガラスの基本的特徴は、ムラーノ島で制作されていることのほかに、「ソーダガラス」であることがあげられます。

ソーダガラスとは、鉛を含まず、主に炭酸ナトリウムと砂で生み出されたガラス。
比重が軽く、熱して熱いうちに飴細工のように吹いたり伸ばしたりして様々な形に形成することができます。
そのため柔らかなフォルムを作り出すことができ、どこか温かみがあります。
そして様々な鉱物を混ぜることで何万色にも発色し、多種多様な表現が可能です。

「ソーダガラス」の対極に位置するのがバカラや、江戸切子などが代表する鉛を含んだ「クリスタルガラス」。

ガラスは鉛を入れると透明度が増すため、クリスタルガラスは美しい透明度が特徴です。
しかし鉛を入れたせいで比重が大変重くなるので、棒の先につけて吹いたり伸ばしたりすることはできません。
型に入れて形成され、作品によっては冷え固まってからカット加工して装飾をほどこします。 

以下は、chisaで行った展覧会のギャラリートークの一部です。
「ソーダガラス」と「クリスタルガラス」の重さをはかって比べてみたのでご覧ください。

[ ガラスは鉛を入れると、透明度が増す ]という発見は、かつてのヴェネチアの職人によってなされました。
しかし、現在ムラーノ島ではセミクリスタルといってほんの少し鉛を加えたもの以外は、ほとんどが、鉛を含まない「ソーダガラス」です。

「クリスタルガラス」では、吹いたり伸ばしたり、そして錬金術のように様々な色に発色させたりといった職人の技術力を発揮することはできません。

だからムラーノ島の職人たちは、クリスタルガラスの発見を捨てたのです。

ムラーノの職人たちは、1500℃ほどの窯で熱した灼熱のガラスに自分の腕で立ち向かい、命を吹き込むことのできる「ソーダガラス」を選択し、現在もなお、なにか新しい表現はできないかと日夜(にちや)研究し、技術を磨き続けているのです。

そのため「ムラーノガラス」は、型に入れて大量生産されたガラス製品とは異なり同じものが二つと存在しません。

色(明るめ、暗め)、形状、重さ、模様の描き方、気泡の入り方等、それぞれどこかに異なった点があります。

トロトロ、ゆらゆらと熱で溶けたソーダガラスの揺らぎと、職人の手仕事が合わさって出来上がるので、「クリスタルガラス」とくらべると、どこか柔らかみがある、優しいガラスと言えるでしょう。

ピンサー、はさみ、ポンテ(ガラスを吹く時に使う棒)を外した跡など、手作業の痕跡が残っているものが多く、それは、一つ一つ手づくりであるムラーノガラスの制作過程での特徴で、本物のムラーノガラスである証(あかし)なのです。