ムラーノガラスとは

ムラーノガラスとは、北イタリア、ヴェネチアの小さな島、“ムラーノ島” の数限られた職人の手によって一点一点、生み出され、約1000年に渡り受け継がれてきたガラス工芸品です。

一般的にはヴェネチアンガラス、ベネチアンガラスなどと呼ばれ、日本の有田焼や九谷焼と同様、土地の名前が入ったイタリアの伝統工芸品といえるでしょう。

「ガラスの島」とも呼ばれ、現在もガラス工房が密集するムラーノ島ですが、その起源はヴェネチアがまだヴェネチア共和国という一つの国だったころ、高度なガラス技術が国外に流出することをふせぐために、ヴェネチア共和国政府が、ガラス職人とその家族たちをムラーノ島に幽閉した事から始まります。

基本的な特徴は、ソーダガラス(鉛を含まず、主に炭酸ナトリウムと砂で生み出されたガラス)であること。

窯でガラスをドロドロになるまで溶かし、ポンテと呼ばれる吹き棒の先に巻き付け空中で極薄にガラスを吹きのばす技法や、飴細工のように竜や花や鳥などをモチーフにした複雑な装飾を形作る技法、ガラスでレース刺繍を表現したレースガラス、ガラスの塊の中に気泡を閉じ込める技法などなど、高度なテクニックが用いられています。

対極に位置するのが、バカラや、江戸切子などが代表するクリスタルガラスです。

バカラや切子は、美しい透明度が特徴ですが、あの透明度を出すには鉛を加えなくてはならず、比重が大変重くなります。

「ガラスは鉛を入れると、透明度が増す」という発見はヴェネチアの職人がしたのですが、残念ながら吹き棒の先に巻き取り、吹いたり伸ばしたりするには鉛を加えたガラスは比重が重く、型に入れて冷え固まってから装飾を施すことしかできません。

そのためヴェネチアの職人はクリスタルガラスを捨てたのです。

そして、職人の手仕事の技量が発揮できるトロトロと柔らかいソーダガラスで、あまたの名作を生みだしてゆくことになったのです。

そのため、大量生産されたガラス製品とは異なり同じものが二つと存在しません。

色(明るめ、暗め)、形状、重さ、模様の描き方、気泡の入り方等、それぞれどこかに異なった点があります。

トロトロ、ゆらゆらと熱で溶けたソーダガラスの揺らぎと、職人の手仕事が合わさって、ガラスであるのにどこか温かみがあり、柔らかみがある、優しいガラスと言えるでしょう。

ピンサー、はさみ、ポンテ(ガラスを吹く時に使う棒)を外した跡など、手作業の痕跡が残っているものが多く、それは、一つ一つ手づくりであるムラーノガラスの制作過程での特徴で、本物のムラーノガラスである証(あかし)なのです。