こんにちは。チサスタッフの佐々木です。
今回は、2023年秋よりチサ代表 小瀧千佐子の所蔵品をもとに展開いたします日本初となる全国巡回展「コスチュームジュエリー 美の変革者たち シャネル、スキャパレッリ、ディオール 小瀧千佐子コレクションより」の開催を記念して、「コスチュームジュエリー」の魅力について、改めて探求してみたいと思います。
「でもコスチュームジュエリーって、そもそも何?」
「大きくて普段使いできなそうだし、私には関係ないジャンルの物かも・・・」
そう感じる方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、まだまだマニアックな「コスチュームジュエリー」の歴史や楽しみ方などを簡単にご紹介したいと思います。
また、こうしたコラムも随時更新していこうと思いますので、SNSのフォロー、リツイートなど、ぜひ一緒に展覧会を盛り上げていただきたいと思っております。よろしくお願い申し上げます!!
コスチュームジュエリーとは?
そもそもコスチュームジュエリーとはなにか、簡単にご紹介いたしましょう。
ズバリ、デザイン性に富んだ、貴金属や宝石を使わずにつくられたジュエリーの総称です。
「金や宝石を使っていない・・・つまり、安物ってこと?」
そう思うのはちょっと待ってください!
皆さん、もしご自身がジュエリーデザイナーだったら・・・と想像してみてください。
ダイヤやサファイヤなどの宝石、そして金やプラチナを使用するファインジュエリーと、色とりどりのガラス、樹脂、羽や様々な金属など、どんな素材でも使用できるコスチュームジュエリー、どちらがより自由に、伸び伸びとデザインができると思われますか?
上記は、1950年代に発表されたスキャパレッリというブランドのコスチュームジュエリー。大ぶりなブレスレットとイヤリングですが、素材は、ガラスと合金です。
左側の深いブルーのガラスパーツをよくご覧ください。縞模様が見えませんか?これは「タイガーストライプ」と呼ばれるシリーズで、ガラス職人の類まれな技術で美しい縞模様を表現したガラスパーツを使用しています。
これをもし、天然石で制作するとしたら・・・ものすごく高額かつ、一点作れるか作れないか・・・と言ったところでしょうか。また、大変重くなり、身に着ける人に負担がかかるかもしれません。
こちらは、ミリアム・ハスケルによるコスチュームジュエリー。ガラスパールのネックスとブローチです。
パールの花びらを持つお花が、実にエレガントかつチャーミングな作品ですが、こちらも天然のパールではとても実現が難しいでしょう。
逆に言えば、天然のパールの美しさを生かすには、このデザインは適当とは言えないかもしれません。
つまり、コスチュームジュエリーとは、徹底的に《デザイン至上主義》であるということ。
全てのはじまりはデザイン。
そのデザインを実現するためには、さてどんな素材を使おうか・・・と、なるわけです。
対するファインジュエリーは、石ありき。素材ありきです。宝石を、いかに美しく見せるかが出発点と言えるかもしれません。
職人さんの技術がともなえば、デザイナーが作りたいものはなんでも作れる、それがコスチュームジュエリー・・・。
だからデザイナーさんのスタイル、スピリットがそのまま作品に反映されるわけです。
まとめると、コスチュームジュエリーとは、
貴金属をもちいるファインジュエリーとはことなり、デザイナーのデザインを表現するため、自由な素材で作られたファッション・ジュエリーの総称を言います。
コスチュームジュエリーの歴史
コスチュームジュエリーをスタートさせたのは、ポール・ポワレというフランスのファッションデザイナー。
ポワレは20世紀初頭に「脱・コルセット」で女性のボディを解放したパイオニア的デザイナーとして知られています。
ポワレは良く「テーマ」を決めたパーティーを開催していたそうで、上記の煌びやかなマスクは「深海」がテーマのパーティーで妻のためにデザインしたタコのマスク!おでこの部分をご覧ください。タコが見えましたか?!
そしてコスチュームジュエリーの存在を世に広めた第一人者が、言わずと知れたココ・シャネル。
彼女は、自身が発表した美しいフェイクパールのネックレスを褒められた際『私が付ければ、本物に見える』という粋な台詞を残したとか。
ファインジュエリーはかつて、権力や財力を見せつけるための道具として、夫が妻に身につけさせていた時代がありました。この台詞は、そんな時代への彼女なりの反発とも受け取れますね。
実際、戦争によって女性が働きに出る機会が増え、買ってもらうのではなく、自身で働き貯めたお金で、自分のために自分の好きな装身具を買えるようになったということもコスチュームジュエリーの発展には影響していると言えるでしょう。
ヨーロッパで発祥したコスチュームジュエリーは、やがてアメリカに渡り、ファインジュエリーの伝統的固定観念のないアメリカで、爆発的発展を遂げます。
コスチュームジュエリーは、自由に自分自身を表現するためのアイテムとしてアメリカで成熟し、大統領就任式で夫人の胸元で輝くまでに地位を高めたのです。
コスチュームジュエリーの楽しみ方
ここまで長々読んでくださってありがとうございます。
コスチュームジュエリーに興味はわいたけど、実際に身につけるとなったらまだまだハードルが高いし、どのように楽しめばいいか分からない・・・と感じる方がほとんどではないでしょうか?
身につけるのにチャレンジしようとしても、ネックレスはまだしも、ブローチはなかなか難しいというお声をよく聞きます。
出典:instagram @theroyalfamily
私が思うに、ヨーロッパの方のコスチュームジュエリーの楽しみ方と、アメリカの方のコスチュームジュエリーの楽しみ方には、かなり差があるように感じます。
やはりヨーロッパは、私たちの「着物」や「帯どめ」と同じように古くから「ジュエリー」が文化として根付いています。
エリザベス女王のこちらの装いは、同じ形のブローチを縦に斜めにふたつ、並べてつけていますね。このように様々な楽しみ方が存在しますが、形式・・・と言うか、私たちが基本的に帯どめを帯の真ん中につけるように、ある程度のルール性を持って身につけてらっしゃるように思います。
出典:instagram @advancedstyley
一方こちらは女王と同世代のアメリカの素敵な女性たち。
新大陸アメリカは、ジュエリーの文化が古くからあったわけではないので、みなさんとにかく自由に、自己表現の道具としてコスチュームジュエリーを身に着けていますね。
以下の動画では、今回の巡回展の監修者でありコスチュームジュエリーコレクターの小瀧千佐子が日本では珍しい、「クリップ」の楽しみ方について解説しています。
動画を要約いたしますと、正解はないので、自己表現のための道具として、なりたい自分になるためのアイテムとして、トライアンドエラーを繰り返してみるといいよ。ということですね。
また大量生産ではなく、ひとつひとつ手作業で作られた作品ですから、じっくり隅々まで観察することも、コスチュームジュエリーの楽しみ方のひとつと言えるかもしれません。
作品の裏に施されたデザイナーのサイン、様々な素材、斬新な配色やフォルムなど、見れば見るほど新しい発見があるはずです。
是非、展覧会をお楽しみいただければ幸いです。
まとめ
20世紀初頭から発展を続け、今あらためてその価値を見出されている「コスチュームジュエリー」。
特に今回の展覧会に出展されるヴィンテージ作品たちは、宝石や金のように価値ある素材はいっさい使われていないにも関わらず、こうして100年近くの時を越え現代まで残っている・・・。それこそが、作品が優れたアート性を持っている証拠のように思います。
古びることのない個性はもちろんのこと、デザイナーの情熱や精神性、つまり「スタイル」が色濃く反映されたものばかり。
そし忘れてはいけないのが、その素晴らしいデザインを実現した類まれなる職人技にも、敬意を払うべきですね。
長くなりましたが、少しでもコスチュームジュエリーに対してご興味を深め、展覧会を楽しみにしてくだされば幸いです。