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第二の黄金期(1930~1970)

 

 17世紀に衰退の一途をたどったムラーノガラスですが、20世紀初頭、不死鳥のように再び息を吹き返します。

 驚くべきことに、この復活を支えた人々の多くは、昔からムラーノ島でガラスを作っていた家系の人たちでした。

 バロビエール、サルヴィアーティ、バラリン、セグーゾ、ヴェニーニ、バルビーニ、トーゾなど、かつて貴族に愛された名門工房の名前が挙げられます。当然のことながら彼らは、先祖の打ち立てた黄金時代の伝統のもとに生き制作を続けていますが、それだけでは新しい時代に対応しえないことも知っていました。

そこで、建築家、陶芸家、画家など、異分野のアーティストを芸術監督として迎え入れます。当時の工房では、先祖にならって16世紀の貴族向けの作品を作る一方、極めて前衛的で革新的なデザインの作品づくりも同時に手掛けていたのです。

 セグーゾ工房には、画家のサルバドール・ダリや陶芸家のフラヴィオ・ポーリが、ヴェニーニ工房には、建築家のジオ・ポンティやカルロ・スカルパ、サリール工房には画家のピエロ・フォルナセッティ、ヴィットリオ・ゼッキン、グイド・バルサモ・ステラと言った独創性に富むアーティストたちが、卓越した熟練のガラス職人と出会い、目を見張るような斬新で生き生きとしたガラスを爆発的に誕生させたのです。

 この新しい時代のムラーノガラスは、装飾をそぎ落とし、シンプルなフォルムを重視しています。

 それまでのムラーノ島で何世代にもわたって育(はぐく)まれたのは、炉のそばで、数少ない工具によってフリーハンドで複雑な模様やフォルムを成型する比類なき職人技でした。しかし言い換えれば20世紀のムラーノガラスは、これまで培ってきたレースガラス技法や、あらゆる装飾を完全に捨てることを意味しました。貴族向けの装飾に取って代わったのは、明瞭なラインのフォルム、そして単色、あるいはグラデーションの洗練された色彩でした。

 その全く新しい空間において存在感あるデザインの花器やオブジェなどは、これまでのムラーノガラスの概念を打ち破りました。量感が有りシンプルで、それでいて優雅で調和がとれ、機能美まで備わった瑞々しいガラスだったのです。

 

  >ムラーノガラス 時空を超えた美へのいざない