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2024年ムラーノガラスの干支「辰」

chisa代表 小瀧千佐子が数十年に渡って続けている“ムラーノガラスで干支のオブジェを作るプロジェクト”。

本年は、ガブリエーレ・ウルバン氏、そしてジャンパオロ・ラガッジ氏の非常に対照的な2種類の「辰」がムラーノ島からやって来てくれました。

制作:ガブリエーレ・ウルバン
ムラーノガラスの干支シリーズ「辰」

制作:ジャンパオロ・ラガッジ
「辰 ― 空を翔ける」

本年は巡回展の業務などでムラーノ島へ出張に行くことができず、十二支の中でも大変難しい「辰」を現地に赴くことなく制作することとなりました。

日本でデザイン画が上がったのは今年の6月末。しかし私たちの手元に無事「辰」が届いたのは、ついこの前の12月半ば過ぎ。皆様へのご紹介がすっかり遅くなってしまったことをお詫びいたします。

お詫びのしるしに、今年は実際に私たちがマエストロとのやりとりに使用した写真をご紹介しながら作品の魅力をお伝えしようと思います。

まずは、もう数十年に渡って小瀧と干支の制作をしてくださっているガブリエーレ・ウルバン氏の【ムラーノガラスの干支シリーズ「辰」】。

ウルバン氏の「辰」は、ムラーノガラスの伝統技法“ムリーネ”と24金箔をふんだんに使って作られます。ムリーネとは上記のように、断面に様々な模様が出るよう、まるで金太郎のようにつくられたガラス棒のチップを使って制作されます。

金太郎飴や太巻きは、手で直接触りながら作れますが、熔けた熱いガラスはもちろん触れません。直接触れることなく、断面にあんな複雑な模様を描き出すガラス棒を作るなんて大変な技術です。

それだけでなくできあがったガラス棒をカットし、さらに作品作りの下準備として、断面の模様がしっかりと上を向くように手作業で整えるなど、細かな作業も必要です。

上記のお写真でムリーネの断面を整えているのはアシスタントのマヌエラ。基本的に工房に届くメールなどは彼女が見てくれているので、現地に行かれない今年は彼女頼み・・・しかしマエストロ(ガブリエーレ)はマヌエラの言うことを聞かないことも多いので(!)携帯に直接何度も電話した、りチャットアプリを駆使したりと、とにかくこのAIの時代になってもムラーノ島と仕事するのはオンラインでは困難の極みなのです。時差もありますしね。

小瀧も「飛んで行った方がどれだけ早いか・・・!」と口に出すこともしばしばでした。

上記の白いムリーネを断面がすべて上になるように整え、ガラス窯から巻き取ったドロドロのガラスを、この上で転がすことで溶着し、

いくども転がしてガラス種とムリーネがしっかり合わさったら、丁寧に広げておいた金箔を転がし、金をかけるのです。

2023年度の干支「卯」の制作動画を、ガブリエーレ氏の工房で撮影させていただきましたので是非ご覧ください。

今年は特別にデザイン画をご覧いただきます。

chisaでは毎年、ウルバン氏に3種類ほどパターン違いのデザイン画をお渡しします。その中からウルバン氏がひとつ選び、試作をしてくださるという流れです。

上記は何度目かの試作時のお写真。目に合わせるムリーネが、なかなか最適なものが見つかりません。一時は、いっそ目にはムリーネを入れないでやってみようということに・・・。

1000℃遥かに越える熱い窯から、ドロドロに溶けたガラス種を棒の先に巻き取り、形を形成していくわけですが、もちろん手では触れないし、熟練のマエストロの技術を持ってしても今回の「辰」はかなり難しい様子・・・

ひとつ試作があがってフィードバック、そして再度作成・・・を繰り返すわけですが、わたしが想像するに、ガラスはすぐ固まってしまいますから、どう作るかをしっかり頭の中で整理できないと作り始められないのではないでしょうか。

試作を重ねた結果、目は三角のムリーネを入れることになりました。三角にムリーネは一般的な丸のムリーネに比べて制作が難しく、珍しいです。

くるりと巻かれたボディのフォルムは、確かに手作業で巻かれた跡が見受けられますね。マエストロがどんどん冷えて固くなっていくガラスを、くるり・・・グイっ・・・グイっと、負荷をかけすぎないように気をつけながらかたち作ってくださるのが想像できて、胸が熱くなります。

尾や首の部分のクリアガラスにもたっぷりと24金箔が被せられ、非常に煌びやか。でも手作りの温かみにあふれていて、干支として、優しく家や家族を守ってくれそう。

制作に立ち会えず心配でしたが、その分マエストロの意見もたくさん入り、結果的に非常に上質な作品になったと自負しています。

つづいてご紹介するのは、ジャンパオロ・ラガッジ氏の【辰 ―空を翔ける】。干支シリーズには、今回が初参加のマエストロです。

ガブリエーレ氏が大きな窯でガラスを作るのに対し、ジャンパオロ氏はバーナーワークのマエストロです。義理のお父さんは、chisaでもコレクションを開催しました、ミニチュア作品を作らせたら右に出るものはいないと小瀧が語るリビオ・ロッシ氏

最初は一色でフォルムを模索しました。目の上のふくらみがポイントです。バーナーワークならではの表情、そして爪の先、尻尾の先まで繊細な表現が魅力的。

次はカラーの調整です。透明にも不透明にもできるムラーノガラス。透明の「辰」もガラスらしくて素敵ですが、他にはない「辰」であること。バーナーワークの繊細さがありつつ、しっかりとした存在感があること。そして、ジャンパオロ氏らしい表情の表現が最適にあわられるカラーを選択しました。

デザインが決まれば集中して制作開始!がんばっているよと、制作途中の写真を送って来てくれました。

誕生したのは、まさに見たことがない「辰」。

可愛らしくて、美しくて、今にもしゃべり出しそうな表情ではありませんか・・・。家や家族を守るというより、そっと先回りして不思議な力で私たちを助けてくれそう。なんだか物語性のある作品に仕上がって大満足です。

彼の作品は催事などに出店していると子供たちがワーッと寄ってくるんです。

じーっと見つめていると、ふわりと浮いて動き出し、子供たちのお顔の周りをちょこまかと飛び回りそう!2024年辰年にお子さんが誕生するご家庭にプレゼントするなんて、すごく素敵ではないでしょうか?

長くなってしまいましたが、今年は二種類の干支の制作秘話をたっぷりとご紹介させていただきました。

最後に、ひとつだけ皆様へお伝えしたいことがあります。

基本的に、ムラーノ島にてオリジナル作品を制作していただくにあたって、依頼者が現地を訪れないなんてことは、ありえないことだと私は思っています。

ムラーノ島に咲くお花 2022年撮影

ムラーノ島で見かけたヤモリさん

ムラーノ島おうちの庭から道にまであふれ出る木苺

ムラーノ島の人が入るお墓のあるエリア

ガラスの島にはしっかりと島のルールがあり、彼らのやり方があります。

まずは彼らの元を訪れ、彼らのルールに従うの前提の世界です。リモートで作品作りをしようなんて、普通は相手にもされないでしょう。

いまだに世襲制が前提の工房経営、アメリカへの職人流出、燃料費に異常高騰など、ムラーノ島の現状は決して明るい物ではないかもしれませんし、疑問を持つ島の人も多くいます。

しかし私は、そのある意味非常に閉鎖的な世界観も含めて、ひとつの文化であり「ムラーノガラス」なのだと、感じることも多いです。

今回は、40年以上ムラーノ島に通い続けた小瀧とマエストロの関係性のおかげで、なんとか現地に行かずに素晴らしい干支を制作できました。マエストロには、感謝しかありません。でも、来年は必ず彼らと対面し、同じ灼熱の工房で汗を流しながら、作品作りをするべきだと感じます。

素晴らしい2種の「辰」は、ともに数量限定。一般発売は12月26日よりスタートです。

ご贈呈分も合わせて、早めにご検討いただけましたら幸いです。

※一般販売ページは12月26日よりオープンします