1932年、ムラーノ島に設立されたA.V.E.M.(Arte Vetraria Muranese)は、20世紀ムラーノガラスの発展を語るうえで欠かすことのできない名門工房です。
エミリオ・ナゾン、エルド・ナゾンらがデザインに関わり、それまでの伝統的な装飾性にとどまらない、モダンで斬新な造形表現に積極的に取り組みました。
初期には、画家でありガラスデザイナーでもあったヴィットーリオ・ゼッキンの影響を受けた作品も見られ、芸術と工芸の融合という20世紀ムラーノの重要な潮流を体現しています。
A.V.E.M.は1980年代頃まで活動を続け、多くの優れたマエストロによる作品を世に送り出しました。日本のガラス作家である藤田喬平氏が制作を行った工房としても知られています。
しかし現在はすでに閉鎖されており、新たな作品が生み出されることはありません。
私たち〈chisa〉は、工房が存続していた時代にオーナーとのご縁をいただき、閉鎖後も現地のストックルームにて1点1点作品を選び、直接仕入れを行ってまいりました。
そのため現在ご紹介している作品は、市場流通品とは異なり、ムラーノ島のA.V.E.M.工房に眠っていたヴィンテージピースです。
さらに近年、工房に残されていたコレクションは大きな企業によって管理されることとなり、私たちもかつてのように直接仕入れをすることはできなくなってしまいました。
A.V.E.M.のガラス、特にレースガラスは他の工房と一線を画す優美さがあります。
レースガラスの名門バラリン工房のスタイリッシュなレースガラスと比べると、どこか女性的で、優しい。藤田恭平氏が作品を制作していたこともあり、日本らしい桜色、藤色など、淡い色表現も唯一無二です。
目にした瞬間に私たちの心を捉えるそれら作品は、こじんまりとした日本の暮らしの中で、静かに輝き続けます。
その特別な出会いを、ぜひお楽しみください。