“ 日本に本物のムラーノガラスの美しさを知らせたい ” と一途に思い込み、夢中で駆け抜けてきた40年でした。
そして今振り返れば、如何に一流のマエストロや工房と良いお仕事をさせていただいたことかと気付くのです。
何人もの偉大なマエストロ達がこの世を去りました。
私を育ててくれたマエストロや工房の仕事を、今こそきちんとご紹介しなくてはと、昨年より工房にフォーカスした企画展をスタートさせました。
この度は、ムリーネガラス技法で有名なエルコレ・モレッテイ工房にスポットを当てます。
1911年創業のエルコレ・モレッテイ工房は、モレッティ3兄弟により設立され、現在は創業者の孫であるジュリアーノ・モレッティが引き継いでおりムラーノ島特有のファミリー経営の工房です。
紀元前1世紀、古代ローマ時代の人々は既に色ガラスを小さく砕いたモザイク片で壺などを作っていました。
1878年に1500年もの長い間途絶えていたこの技法に光を当てたのがムラーノ島のガラス工房の後ろ盾となって援助してきたヴィンチェンツォ・ザネッテイ神父です。
神父はこの技法を”ムリーネ“と名付けてムラーノ島ならではの美しい色ガラスで”ミッレフィオーレ(千の花)とも呼ばれる金太郎飴の様に断面に文様のある技法を広めました。
創業時、エルコレ・モレッテイ工房はこの技法を用いてムリーネのビーズとロゼッタと呼ばれるムラーノで発明したビーズという二つの古典技法でビーズ製作からスタートしました。
その後長い年月をかけてヨーロッパ向けの洗練されたビーズを始め、アフリカ交易用のコントラストの効いた多種多様なビーズを製作しムラーノで不動の地位を築きます。
1970年代初期、モレッティはムリーネのペンダントを発表、業界で革命的な大旋風を起こします。
その後新しくムリーネでプレートやオーナメントなど異業種に着手、近年はデザイナーを迎えて更に洗練された商品群を発表し高く評価されています。
ムリーネのチップをピンセットで一粒一粒並べて何度も窯に入れ溶着し、磨き上げて作る
お皿やお鉢の何と愛らしいことでしょう!見飽きる事はありません。
何をのせましょうか?手作りならではの優しい温かさ、文様に託された自然界の美しさにときめいて、毎日の生活の中でお使いいただければ幸いです。
小瀧千佐子