
こんにちは。チサスタッフの小瀧万梨子です。
ヴェネチア・ムラーノ島での出張の様子を少しご紹介したく、筆をとりました。
今回滞在しているアパートは、ヴェネチア本島ではなく、ガラスの島、ムラーノ島の真ん中にあります。工房を訪ねるにはとても便利な場所です。
もうヴェネチアはすっかり暑く、あまり有効活用はできませんでしたが、ベランダもあります。

近所には八百屋さん、お惣菜屋さん、スーパーがあり、生活するにもとても便利です。

お惣菜屋さんのラザニアは、なんというかまったく重たさがなくてとても美味しく、今まで食べたラザニアの中で一番食べやすかった・・・。ペロリでした。
そしてイタリアの野菜は本当にしっかりと味がして、誠に美味です。

さて、ムラーノ島でのお仕事を大きく分けると、主に3つ。
オーダー内容の確認。
新作の開発。
そして、既存作品の買い付けです。
基本的には、あらかじめメールで工房さんにオーダーシートをお送りするのですが、メールだけで動いてくださる工房さんは・・・あんまりありません(笑)
自分の足で、訪ねます。
ボンジョルノが、必要です。
工房を訪問し、新作がある場合はそこで綿密に打ち合わせ。
サンプルを制作していただく日を決めます。

その再訪日に立ち会いながら新作のサンプルを制作していただき、細かな部分を確認しながら、作品の完成度を高めていきます。
ガラスは徐冷の時間が必要ですから、必要であればもう一度別日に工房を訪れて、完成した作品を手に取って最終確認です。
ギャラリーやストックルームのある工房では、既存の作品を拝見し、購入したり、気になるものがあれば新たにオーダーを追加したりします。

▲宙吹きビーズの工房さんにて
まず感じるのは、たった数週間の滞在期間の中で、サンプルを作り、調整し、完成したデザインまで確認できることの素晴らしさです。
もちろん分野や工房にもよると思いますが、フランスの場合は、サンプルが完成するまでに数カ月かかる印象があります。
ムラーノ島の職人さんからは、デザイナーやアーティスト、依頼主の思いにできるだけ早く応えたいという優しさや心意気、なにより〈職人魂〉を感じます。
ラグジュアリーブランドの革製品の多くがイタリアで作られていることにも納得ですね。

▲ヴェネチア、サンマルコ広場の一角
忘れてはいけない大切なことは、日本人である私たちと、ヴェネチアの職人さんとでは、文化や、生活スタイルがまったく違うということ。

おうちの広さや空の色、咲いている花の色、食事の味や量、食べ方も全く違う。
ですから、作品の楽しみ方も違いますし、「心地が良い」と感じるサイズや、「魅力的」と感じる色は、違ったりするわけです。

▲VENINIのショールームにて
つまり、既存の作品をそのまま持ち帰れば日本の皆さまに喜んでいただける、というわけでは決してないということです。
でも・・・不思議なことに同じものを美しいと感じることはできる・・・。
だからこそ、私たちは異文化に惹かれるのではないでしょうか。

代表であるチサさんこと小瀧千佐子が、ムラーノガラスの仕事をこれほど長く続けてこられたのは、日本の暮らしに馴染む作品を選び、時にはデザインし、ご紹介してきたからだと感じます。
今から40年ほど前、ヴェネチアのガラスが危機的な状況にあるという新聞記事をきっかけに、チサさんは「私がこのガラスを日本に紹介しなくては!!」と、前職を辞め、この仕事を始めました。

今思えば、かなり無鉄砲にも感じます。
けれど、いつの時代も、だれに頼まれたわけでもないのに「勝手に背負って頑張る」みたいな情熱や使命感って、何かを動かすうえで、とても大切な力なのではないかと、わたしは思うのです。

欧米において、ムラーノガラスは基本的に、〈飾って〉楽しむものです。
一方で、私たち日本人は〈使って〉楽しむ達人だと思うのです。

私たちには「見立て」という素晴らしい文化があります。
グラスや鉢を花器に見立てて花を飾ることもできます。
ボウルにお抹茶を入れたり、香水瓶に金平糖を入れて振り出し(茶道具)として使ったり、自分自身のアイデアで、さまざまな楽しみ方を見つけることができるのです。

最近知ったのですが、この「見立て」、どうやら欧米の方はやらないそうなんですよね。
そう考えると、私たちは、ムラーノガラスをとても幅広く楽しむことのできる民族なのかもしれません。

欧米に比べると、日本の住まいは天井が低く、お部屋も小さいけれど、そのような私たちの暮らしの中でも、静かに、そして確かに輝く作品があります。
今回も、皆さまにご紹介できる日を楽しみに、ひとつひとつ丁寧にお仕事してまいります。
それでは、今回も拙い文章にお付き合いいただき、ありがとうございました。
皆さまに、素敵なことがたくさん起きますように。
小瀧万梨子