ポール・ポワレ『深海』修復記録 VOL.2 マスク【素材について】

素材について

オートクチュール刺繍の手法で、銀糸のチュール生地に、*コンテリエビーズ、*ラインストーン、ラインストーン付きブレード、モール糸が縫い取られ装飾が施されており、正面、頬と鼻下以外、周囲はぐるりと銀糸の束で縁取られている。

銀糸のチュール生地①:オリジナルの生地。銀糸。 ②:足された生地。銀糸。

コンテリエビーズ①:シルバーが入ったソンメルのコンテリエ。アクアマリンの濃淡。紫色濃淡。
コンテリエビーズ②:カットが入ったコンテリエ。アクアマリン。ブルー。
コンテリエビーズ③:シルバーの箔とカットが入ったコンテリエ。クリア。

 

ラインストーン:座金の底に十字の溝があり、爪が4つ。一粒ずつ縫い付けられている。座金の色はシルバー。薄く大変柔らかい。石は底が平ら。*ローズモンテ。大きさは5種類あり、主にグラデーションの部分に使用されている。

ラインストーン付きブレード①:
マスクトップ部分のみに使用。銀糸の束とラインストーンの組み合わせ。座金は、上から被せるものと下から受けるもの2つで一組。      
上はリング状で爪が4つ、下はコーン状。下のコーンと石の間に銀糸の束をはさみ、上からリング状の座金を被せ爪で留めて固定されている。座金は厚めで固い。メッキが薄れて真鍮のような素材が見える。石は底がV型。

ラインストーン付きブレード②:
目のスリットの周囲などに使用。銀糸の束とラインストーンの組み合わせ。座金はお椀型で、左右に銀糸を通す穴が空いている。銀糸を通してから石を嵌め、縁を窄めて下から包み込むように固定されている。石は底がV型。

ラインストーン付きブレード③:
マスクの縁など広範囲に使用。銀糸の束2本とラインストーンの組み合わせ。座金はリング状で爪が4つ。座金の両端対角線上に銀糸2本を平行に配し、石を嵌めて下から爪で留めて固定されている。石は底がV型。

モール糸:黒。タコのモチーフのパーツをそれぞれ囲むように使用されている。  
銀糸の束:ねじった束状で、マスクの縁取りに使用されている。耳の手前から上部をぐるりと囲む。

刺繍用糸:オリジナルの部分はおそらく絹糸。艶があり太目。経年劣化や汚れもあって元の色ははっきりとはわからないが、白っぽい。修復されている部分は綿?色は白。

 

*コンテリエビーズ……ヴェネチアで制作されていた1㎜程度の極小のガラスビーズのこと。

*ラインストーン……鉛クリスタルガラスをカットした、模造ダイヤモンドのこと。

*ローズモンテ……ラインストーンをロゼット(バラのつぼみのようなデザイン)カットした模造ダイヤモンドのこと。


ポール・ポワレ『深海』 修復記録

《マスク》

VOL.1【形状・構造・状態について】

VOL.2【素材について】

VOL.3【修復作業】

《ブレスレット》

VOL.4【形状・構造・状態について】

VOL.5【素材について】

VOL.6【修復作業】