ポール・ポワレ『深海』修復記録 VOL.6 ブレスレット 【修復作業】
とにかくボロボロ、どこから手をつけようかと初めは途方に暮れてしまったが、写真をもとに、できる限りその状態に近づけるよう、展示に耐えられる状態にまで強度を出せるよう努めた。幸い不足しているパーツもほとんど無く、分解し組み直し修復し終えることができ本当にほっとしている。
とにかくボロボロ、どこから手をつけようかと初めは途方に暮れてしまったが、写真をもとに、できる限りその状態に近づけるよう、展示に耐えられる状態にまで強度を出せるよう努めた。幸い不足しているパーツもほとんど無く、分解し組み直し修復し終えることができ本当にほっとしている。
とにかくボロボロ、どこから手をつけようかと初めは途方に暮れてしまったが、写真をもとに、できる限りその状態に近づけるよう、展示に耐えられる状態にまで強度を出せるよう努めた。幸い不足しているパーツもほとんど無く、分解し組み直し修復し終えることができ本当にほっとしている。
ジグザグとした山型で、スナップボタンで留めて使用する形状。 表面は、ラインストーンのついたシルバーのブレードで覆われていて、いくつかの山の頂点からブレードを垂らしている。指先側中央からはブレードの先端に大きなブルーのカットストーンを垂らしている。
オートクチュール刺繍の手法で、銀糸のチュール生地に、*コンテリエビーズ、*ラインストーン、ラインストーン付きブレード、モール糸が縫い取られ装飾が施されており、正面、頬と鼻下以外、周囲はぐるりと銀糸の束で縁取られている。
オートクチュール刺繍の手法で、銀糸のチュール生地に、*コンテリエビーズ、*ラインストーン、ラインストーン付きブレード、モール糸が縫い取られ装飾が施されており、正面、頬と鼻下以外、周囲はぐるりと銀糸の束で縁取られている。
額から口の上にかけて顔の上半分を覆い、2つのスナップボタンを用い頭の後ろで止める仕様。 目の位置にスリットが入り、耳の位置に小さめの覆いがついている。タコのモチーフが、額を中心 に描かれ、下、左右に向かって放射状に足を広げている。
私たちの考える〈コスチュームジュエリーとはなにか?〉という定義について、ご紹介したいと思います。 [*]が付いた用語に関しては、文末に用語解説をもうけましたので、ぜひ合わせてご覧ください。 監修者 小瀧千佐子をはじめとする私たちは、コスチュームジュエリーを以下のように定義しています。 貴金属*を用いず、合金、銀、ガラスや半貴石*などで作られたネックレス、ブローチ、イヤリング、ブレスレットをはじめとするファッションジュエリー。 こう定義すると、貴金属を用いないならば、巷(ちまた)で安価に販売されているアクセサリーと、どう区別すればよいのか?と思われる方もいらっしゃるでしょう。 差別化する際の大きくなポイントは、作品のランクと、現存してきた時間です。 私たちはコスチュームジュエリーを、大きく三つのランクに分けて考えています。 ①オートクチュール*用にデザイン制作されたもの ②プレタポルテ*用にデザイン制作されたもの ③大量生産され、広く一般のために生産されたアクセサリー ①は、オートクチュールのドレスに合わせて制作されたコスチュームジュエリーをさし、それらは「クチュールジュエリー」とも呼ばれています。1920年代から30年代には、シャネルやスキャパレッリ、そしてバレンシアガ、ディオールなどが、個性に富んだ素晴らしいクチュールジュエリーを発表しました。 ②は、上記で記したようなメゾン*がプレタポルテ、つまり高級既製服の販売をスタートした際に、それに合わせて数量限定で制作されたものをさします。主に1950年代以降に制作され、ヨーロッパにおいてはコスチュームジュエリーにブランド名が刻印されはじめたのもこの頃からです。 そして③の一般用のアクセサリーの多くは、専門店や百貨店で販売するために型で鋳造されたのち手作業で仕上げられ、生産数はヨーロッパでは数百個、巨大な市場を持つアメリカでは数千個から数万個ほど作られたものをさしています。 今展に出展されるほとんどが①と②にあたるため、作られた数が少なく、広く一般向けに生産されたアクセサリーとの大きな違いは、その希少性にあると言えます。そして当然、オートクチュールは一流のデザイナーと職人によって上質な素材で作られるものですから、それに合わせて制作されるコスチュームジュエリーも、当然、上質なものであると言えるでしょう。 服飾ブランドでなく、コスチュームジュエリーを専門に手がけるブランド、工房のコスチュームジュエリーももちろん存在しますが、その場合はやはり希少性と、作りの良さ、そしてデザイン性によってランクがきまってきます。 そして、同時に、差別化において重要視されるのが、現存してきた時間について。 現代においてもそうですが、コスチュームジュエリーは常に時代とともあり、流行や世相を反映し毎日生まれては消えてゆきます。金やダイヤのように素材そのものに市場価値がないことから、流行の終焉と共にコスチュームジュエリーは消え去る運命にあるのです。 しかし、今展に登場するコスチュームジュエリーたちはそうではありません。大きな戦争をも乗り越えてきた作品たちがほとんどです。 監修者である小瀧千佐子は、 職人の卓越した技術に裏付けされ独自の様式美を纏(まと)うコスチュームジュエリーは、20世紀の誕生から100年を迎える今、アートとして認識されるべきである。 と明言しています。 日本初、ひいてはアジア初のこの全国巡回展の開催は、コスチュームジュエリーがアジアで初めて≪アート≫として受け入れられた証だと私たちは考えています。 ひとりでも多くの方が実際に作品をご覧いただき、デザイナーたちの生きた時代に想いをはせたり、「私」という個性を見つめ、それを表現するにはどんな物を身につけるべきかを考えたり・・・皆さまにとって実りあるご高覧体験になることを、切に願っています。 用語解説 貴金属:ジュエリーにおいては、金とダイヤモンド、ルビー、サファイヤ、エメラルドなどの高価な宝石をさす。 半貴石:ジュエリーにおいては、ダイヤモンド、ルビー、サファイヤ、エメラルド以外の宝石をさすことが多く、ガーネット、トルコ石、珊瑚、オパールなどがあげられる。 オートクチュール:デザイナーが顧客のため完全にオリジナルデザインし、上質な素材と卓越した職人の手によって仕立てられた一点物の高級衣服をさす。現在では組合が存在し、加盟ブランド、つまりクチュールメゾンの仕立服のみをさす。 プレタポルテ:一般的には既製服全般をさすようですが、今展では高級既製服をさします。パリ、ミラノなどで定期的に開催されるファッションウィークでは、プレタポルテ・コレクションと称され、ランウェイをはじめ、各ブランドのショップで新作プレタポルテが紹介されます。 メゾン:明確な定義は難しいですが、今展では、オートクチュールを制作できるトップレベルの服飾ブランドの会社や店舗をさします。...
こんにちは。チサスタッフの佐々木です。 今回は、2023年秋よりチサ代表 小瀧千佐子の所蔵品をもとに展開いたします日本初となる全国巡回展「コスチュームジュエリー 美の変革者たち シャネル、スキャパレリ、ディオール 小瀧千佐子コレクションより」の開催を記念して、「コスチュームジュエリー」の魅力について、改めて探求してみたいと思います。 「でもコスチュームジュエリーって、そもそも何?」 「大きくて普段使いできなそうだし、私には関係ないジャンルの物かも・・・」 そう感じる方も多いのではないでしょうか? そこで今回は、まだまだマニアックな「コスチュームジュエリー」の歴史や楽しみ方などを簡単にご紹介したいと思います。 また、こうしたコラムも随時更新していこうと思いますので、SNSのフォロー、リツイートなど、ぜひ一緒に展覧会を盛り上げていただきたいと思っております。よろしくお願い申し上げます!! コスチュームジュエリーとは? そもそもコスチュームジュエリーとはなにか、簡単にご紹介いたしましょう。 ズバリ、デザイン性に富んだ、貴金属や宝石を使わずにつくられたジュエリーの総称です。 「金や宝石を使っていない・・・つまり、安物ってこと?」 そう思うのはちょっと待ってください! 皆さん、もしご自身がジュエリーデザイナーだったと想像してみてください・・・ ダイヤやサファイヤなどの宝石、そして金やプラチナを使用するファインジュエリーと、色とりどりのガラス、樹脂、羽や様々な金属など、どんな素材でも使用できるコスチュームジュエリー、どちらがより自由に、伸び伸びとデザインができると思われますか? 上記は、1950年代に発表されたスキャパレリというブランドのコスチュームジュエリー。大ぶりなブレスレットとイヤリングですが、素材は、ガラスと合金です。 左側の深いブルーのガラスパーツをよくご覧ください。縞模様が見えませんか?これは「タイガーストライプ」というシリーズで、ガラス職人の類まれな技術で美しい縞模様を表現したガラスパーツを使用しています。 これをもし、天然石で制作するとしたら・・・ものすごく高額かつ、一点作れるか作れないか・・・と言ったところでしょうか。また、大変重くなり、身に着ける人に負担がかかるかもしれません。 そいうか私がファインジュエリーのデザイナーだったら、はなからこんなデザインは選択しないと思います。 こちらは、ミリアム・ハスケルによるコスチュームジュエリー。ガラスパールのネックスとブローチです。 パールの花びらを持つお花が、実にエレガントかつチャーミングな作品ですが、こちらも天然のパールではとても実現が難しいでしょう。 逆に言えば、天然のパールの美しさを生かすには、このデザインは適当とは言えないかもしれません。 つまり、コスチュームジュエリーとは、徹底的に《デザイン至上主義》であるということ。 全てのはじまりはデザイン。 そのデザインを実現するためには、さてどんな素材を使おうか・・・と、なるわけです。 対するファインジュエリーは、石ありき。素材ありきです。宝石を、いかに美しく見せるかが出発点と言えるかもしれません。 職人さんの技術がともなえば、デザイナーが作りたいものはなんでも作れる、それがコスチュームジュエリー・・・。...